第29章 にげる
洞穴を抜け引き返し、主道に戻った。こちらもしばらく歩くと、今度は大きな洞穴が口を開けていた。炭坑だ。
恐る恐る足を踏み入れると、中は予想外の世界が広がっていた!溶岩が噴き出し、足場も悪く、灼熱地獄になっているのである。灼熱の洞窟がどこまでも続いている。
すると、早速モンスターが現れた!3体の《ようがんまじん》だ。溶岩に生命が宿ったらしい、流動性のおどろおどろしい魔物である。
リオのすばやさ強化が功を奏し、先手を取ることは出来た。が…
「《メラミ》!」リオは《スターリーステッキ》を振りかざした!
しかし、《ようがんまじん》はダメージを受けていない!
リ「《メラミ》が、まったく効かない!?」二人はひるんで青ざめた!とりあえずしばらくの間は、《メラミ》で開幕1体やっつけられる算段だった。
リオは冷静さを取り戻し、叫んだ。
リ「マナ、全力でバギマよ!」《ようがんまじん》A、B、Cに40程度のダメージ!しかしどれも瀕死には至っていないようだ。
《ようがんまじん》は反撃してくる!
ゴオォォォ!《ようがんまじん》Aは《燃えさかる火炎》を吐いた!二人はそれぞれ30程度ものダメージを受ける!
マ「きゃぁぁぁぁ!!」
リ「つ、強い…!!これはボスなの?そうじゃないはず!」
《ようがんまじん》Bは様子を見ている。《ようがんまじん》Cは殴りかかってきた!マナはダメージを受けていない。
マ「ど、どうする!?」
リ「祈るしかないわ!《バギマ》!!」 《ようがんまじん》A、B、Cに35程度のダメージ!
まだどれも倒れない!
マ「お願い神様!!《バギマ》ー!!」ようがんまじんA、B、Cに再び40程度のダメージ!
魔物の群れをやっつけた!マ・リ「ふー------!!」
二人は背中合わせになり、大きく息をついてへたりこんだ。
リ「今回はなんとか倒せたけど、次はタブン全滅するわ!
もし1ターンに3体揃って《燃えさかる火炎》を吐かれたら…HPが持たない!!」
マ「退散しよう!?」
リ「異議なし!!」
二人はたった1度の戦闘で、炭坑から逃げ出してくるのだった。
アネイルの町に戻り、ぶらぶらと歩く。
リ「あぁあ、しっかりレベル上げしてきたつもりだったのに、あっけなく返り討ちだわ。
この戦力差、どうすればいいの!?」
マ「まぁまぁ、気分切り替えておまんじゅうでも食べようよ」
気分転換の土産物には事欠かない町だ。のどかなのか何なのか、相変わらず今いちよくわからない。
マ「あ、そういえば…
食中毒の戦士さんのところに寄ってもいい?」
リ「どうしたの?」
マ「えへへ。こないだアリアハンのハーブ園で、食中毒の薬になりそうなハーブを摘んできたんだぁ」
リ「えぇぇぇ!アンタどんだけお人好しなのよ!?
あんな自業自得で寝込んだだけの人に、手を差し伸べるなんて!
人に優しくするのはいいけど、相手を選んだほうがいいわよ?」
マ「でも、もう摘んできちゃったし…」
リ「しょうがないわね」
二人は数ある温泉宿の1つへ向かった。
男たちの部屋には、仲間のアヤカたちも看病に来ていた。
この間会った戦士とは違うもう一人の戦士が、うんうんと唸って寝込んでいた。
マ「食中毒に効くハーブ、持ってきたんです」マナはモジモジしながら言った。
ア「なんて優しい子なの!彼の体調は前よりも酷くなってて、困ってたところだったの」
男「か、かたじけねぇ…」
リ「お礼をくれとは言わないけど、少し情報が欲しいの」
ア「えぇ。私たちがわかることであれば」
リ「東の炭坑にはもう行った?」
ア「何度か行ったわ。ボスがあまりに強すぎて、帰ってきちゃったんだけどね」
リ「えぇ!?あのダンジョンをボスまで辿りついたの!?
敵の炎とかめちゃくちゃ痛くなかったですか?」
ア「あぁ、その問題ね。《水の羽衣》を装備したらかなり楽になったわよ」
リ「それ!どこで買えるんですか!?」
ア「この町をずっと南下していくと、海に近い森の中に、テパっていう小さな村があるわ。
そこにドン・モハメって機織り名人の爺さんが住んでて、織ってくれたの」
マ・リ「ありがとう!!」
ア「なかなか大変よ、そこに行くのも」
リ「あの、ちなみに皆さん、レベル幾つくらいですか?」
ア「私たち?25くらいね」
リ「そうなんですね!」
マナとリオはまだ共にレベル20だ。
「なるべくレベルを上げずに他の工夫で攻略していきたい」というリオのこだわりにおいて、平均的であろうパーティよりレベルが「5」低いというのは、なかなかの成果だなと自分に感心した。
『僧侶だけで魔王を倒すには?』