第3章 スライム
最低限の旅の準備が整うと、二人は城壁の外に出た。
ひとたび町の外に出れば、モンスターが出現する危険なエリアとなる。まぁ始まりの町の近くは弱いモンスターばかりだが。
堀の吊り橋を渡りきると、待ち構えていたかのようにモンスターが現れた!2匹の《スライム》だ。
マ「わわ!さっそく出たよ!」
リ「こんくらいでひるんでんじゃないわよ!
アンタ少しはドラクエやったことあんでしょ!」
マ「だって画面の向こうとはワケが違うよぉ~」
ゲーム慣れしているリオはすかさず戦闘態勢に入り、颯爽と先制攻撃をしかけた。《スライム》Aに3のダメージ。これではまだ《スライム》を倒せない。
リ「よわっ!僧侶!」リオは自分に呆れている。
未だひるんでいるマナに、《スライム》Bが突進してきた!
マ「あわわわわわっ」
ぽよん。
《スライム》Bは目論見どおりマナの顔面に突進攻撃をしかけたが、はじかれて転倒している。
マ「おぉ!ホントに痛くない♪」
リ「だから言ったでしょ?
とりあえずゲームに慣れる頃までは、アンタ無敵みたいなモンよ」
《スライム》Aもマナを狙って突進してきたが、やはりマナは痛くもかゆくもない。
マ「わぁーい楽しいー♪」マナは最弱モンスターとの戯れを楽しんでいる。
《スライム》はリオにも突進してくる。リオは3のダメージを受ける。
リ「うっ!よわっ僧侶!!」リオはまた嘆いている。
リ「もぉ、くだらないことやってないでアンタも攻撃すんのよ!《バギ》が使えるでしょ!」
マ「あ、そっか!よぉーし、《バギ》!!」マナは両手を前に突き出してみた。
マナの手から風の刃が発生し、2匹の《スライム》を同時に引き裂きやっつけた!
テッテレー♪戦闘終了のファンファーレが鳴る。
マ「わぁやっつけたよぉ!しかも2匹も同時に!!」
リ「はいよくがんばりました」
マ「なんかわたしのほうがリオより強いんじゃない?防御も攻撃も!」
リ「だからそうなるようにわざと整えてやったのよ!チョーシこいてんじゃないわよもぉ」
マ「テヘヘ、ごめんなさい。
わたしのために手取り足取り、ありがとうリオ」
リ「ホイミ!」3ポイントしか減っていないが、リオは自分に《ホイミ》を唱えて傷を全回復した。
リ「知ってると思うけど、こうやってHPを回復するんだからね?
最初のうちはこんな分担でいきましょう。
アンタのMPは主に《バギ》に使って敵を倒す。
アタシのMPは主に《ホイミ》に使って体力回復。
MPが尽きたらすぐ宿屋に戻って回復。わかった?」
マ「同じ僧侶だけど、役割分担をするってコトね?」
リ「そういうこと。
コレでホンキで魔王退治目指すからね♪」
二人はしばらく、町の周りで弱いモンスターを倒し、レベル上げをした。
レベルが3になったところで、今日はゲームを切り上げることにした。マナはレベル3までのステータスポイントを、また全部しゅび力に全振りした!
マナのしゅび力は48になった!ちからは3のままであるが。
リオはこのレベル上げの途中に、何やら新しいスキルを覚えた。
このゲームでは、戦闘や行動の内容によって、個別にユニークなスキルや特性を身につけることがあるのだ。
リオが身につけたスキルは《通り魔》。
すばやさの値にかかわらず打撃での先制攻撃を仕掛けることの出来る、なかなか良いスキルである。
習得条件は、魔法職のキャラが短剣で100回連続攻撃することだった。僧侶であるにもかかわらず、《バギ》を使わずに《くだものナイフ》で攻撃し続けたので、珍しいスキルを手にするに至った。
リ「へぇ~!こんな隠しスキルあるんだ~!
プレイスタイルによって、それぞれが個性的なキャラに育っていくんだね」
マ「へぇ~」マナにはまだよくわからなかった。何か行動の結果によってスキルを覚えることがある、ということだけは把握した。
『僧侶だけで魔王を倒すには?』