第48章 ぎんゆうしじん
二人はカボチの村へ、元来た荒野を戻った。そして宿屋へと向かう。いつぞやの吟遊詩人はまだそこにいた。
リ「ねぇあなた!外の世界に旅立ちたいって言ってたわよね?」
吟「え?そうだけど…」
リ「確証はないけれど…、
あなたを海の外まで運んであげられるかもしれないわ!」
吟「えぇ、本当かい!?」
リ「本当かどうかはわからないのよ。
とにかく、あなたは勇気を出して限界を超える覚悟がある?」
吟「え!そう言われると…
うう。
あるぞ!僕には勇気がある!今こそ旅立ちの時なんだ!」
リ「それじゃぁ決まり!
一晩休んだら、ニャックポアンの村へ行きましょう♪ アタシたちと一緒に」
吟「僕はノーラ!15歳だよ」
リ「アタシはリオで、こっちはマナ。
え、15歳?アタシたちと同じだわ」
翌日の朝早く、一行は出発した。
リ「一往復したから、きっと前回より早く辿りつけるわ。
この辺の敵にももう慣れたしね。
…ところでノーラ?あなた、レベル幾つなの?」
ノ「え、僕?れ、レベル2…」
マ・リ「レベル2!?」
リ「ホンキなの!?」
ノ「だから、僕はカボチ村から出たことがないんだよ。
出てみたくたって、あまりに魔物が強すぎるんだもの…」
リ「使えるスキルは?」
ノ「《ホイミ》を少々…」
リ「おけ。あなたはずっと、《ぼうぎょ》と《ホイミ》ね。
アタシとマナでなんとかするから」
ノ「お、お世話になります(汗)」
さぁ、モンスターが現れた!
《キラーパンサー》が2匹だ。リオは《スクルト》を唱えた!仲間たちのしゅび力が上がった!
《キラーパンサー》Aは、ノーラに鋭い爪で飛び掛かってきた!
ノ「ひぃぃぃ!」
マナはノーラをかばった!
マナは28のダメージ!《やいばのよろい》の効果でダメージが跳ね返り、《キラーパンサー》Aにも10のダメージ!
ノーラは唖然とした!死闘が始まってわずか10秒、ノーラは泣いてしまった。
か弱く見えるマナが、さも当たり前のように彼をかばってダメージを受け負ってくれたからだ。
「つ、強い…!!」ノーラは驚いた。
そして思った。
「僕だって、僕だって強くなるんだ!!
そしてマナのように誰かを守るんだ!!!」
ノーラはしばらく泣いていた。
リ「ちょっとアナタ何やってんのよ!
いくらなんでもビビりすぎよ!」
ノ「ちがうんだ!違うんだよぉ…!」
ノーラの涙の理由は、しばらく二人には伝わらなかった。
2度目の訪問なら楽になると思ったが、そうでもないのだった。
弱い仲間が加わると、戦力にならないばかりか足手まといになる。1ターン目はいつも《スクルト》や《マジックバリア》から始める必要があり、いつも余計に手数がかかってしまうのだった。時間がかかるし、HPやMPの消耗も激しくなった。
リ「はぁ、はぁ、思ったよりしんどかったわ…。
でも今さら引き返せはしない!」
リオは拳を握りなおした。
マ「リオは強がる当番で、わたしは弱音を吐く当番でもい~いぃ?」
マナも息を切らして、もうクラクラしている。
ノ「この子たち、平然と戦ってるってわけじゃないんだ。
手強いけど、辛いけど、それでもずっと歯を食いしばっているんだな。
『強さ』ってどういうことなのか、僕はずっと勘違いしていた気がするよ…」
『僧侶だけで魔王を倒すには?』