第49章 ゆうき
再び一晩の夜を超えて、ようやくまたニャックポアンへと辿りついた。「おや仲間が増えたのかい?」村の老人たちは、もう親戚の孫のように微笑み話しかけてくれる。
一向は町の奥へと進んだ。ラーミアの居るところへ。
リ「ラーミアお願い、もう1度話を聞いてほしいの」
ラ「起きていますよ」ラーミアは毛づくろいから振り向いて答えた。
リ「彼はノーラ。ノーラはカボチ村の人よ。
彼は、大いなる海を越えて冒険がしたいんですって。でもカボチには船もないし、彼を冒険に連れ立ってくれる人もいないの」
ラーミアは真剣な眼差しでノーラの瞳を覗きこんだ。まったく目を逸らさない。
ラ「………………」
じーっと見ている。
ノ「あ、あの…」
ラ「ノーラ、あなたは辛く険しい旅に出る勇気がありますか?」
ノ「は、はい」
ラ「親と離れ、友と離れ、一生戻ってこられないかもしれない。そんな覚悟がおありですか?」
ノ「え?…は……はい」
ラ「誰も助けてはくれないときもあるでしょう。すべての痛みを自分で耐える覚悟がおありですか??」
ノ「……は、……は、……はい!!」ノーラはまた泣きそうになっている。目をぎゅっとつむって必死に涙をこらえている。
ラ「では最後に聞きます。 あなたは…」
ノ「はい」
ラ「あなたは、なぜ旅立つのですか?
なぜ強くなるのですか?」
ノ「あの村はつまらない。
海の向こうへ行って、楽しいものをいっぱい見たい、と思っていました」
ラ「…はぁ。」ラーミアは溜息をついた。
ノ「…思っていました。
つい昨日の朝までは、実はそう思っていました。
でも今は違うんです」
ラ「…ほう?」
ノ「誰かを守れるように強くなりたい」ノーラは小さな小さな声で言った。
ラ「え?何とおっしゃいました?」
ノ「僕は、誰かを守れるほどに強くなりたいんです!
人をかばって殴られても、それでも泣き言言わずに堪えられるくらい、強くなりたいんです!」
ラ「魔王を倒してくれるのではないのですか?勇者となってくれるのではないのですか?」
ノ「それは…それはわからない。
魔王を倒すことに興味はありません。
僕はただ、身近な人を守りたい。そのときに誰がそばにいるかはわからないけど、いつも身近な人を守れる僕になりたい。そのために魔王と戦うことが必要なら、戦うかもしれない」
ラ「………。
………。
良いでしょう!」
ノ「え…!?」
ラ「あなたを私の背に乗せ、遠い世界に運びましょう!」
ノ「本当ですか!?」
ラ「それを見極めるために、あなたの考えを聞いたのです」
ノ「ありがとう!ありがとうございます!!」
マ「わぁー!良かったねぇ♪」
ラ「お二人も乗せましょう。
彼(か)の地へ、彼を送り届けてあげてください」
マ・リ「やったぁ!!」
ラーミアは大きく大きく息を吸い込むと、その白い翼を大きく大きく、勢いよくはためかせた。
ラ「さぁお乗りなさい。しっかり捕まって」
リ「え、もう!?」
ラ「もうです。旅人に別れのあいさつは不要。それは寂しさを助長するだけですし、彼は『家族と離れる覚悟がある』と言いました」
マ「でも、武器も何の準備も出来ていないよ?」
ラ「大丈夫です」
そう言うと、せっかちに、でも優雅に、ラーミアは空高く舞い上がった。
ラ「さぁ、行き先は私に任せてもらいますよ」
ラーミアは、パフォーマンスがてらに少し辺りを旋回すると、東のほうへ向かって優雅に飛んでいった。
『僧侶だけで魔王を倒すには?』