第51章 スタンシアラ
ノーラと別れて、二人は二人の冒険に戻った。
アリアハンの玉座の間には新しい《旅の扉》が出現し、そこに飛びこむと新階層へと繋がっていた。
リ「良かったー!
アリアハンの玉座に戻されたとき、もしやアタシたちのレベルや装備まで初期状態に戻っちゃったかと不安になっちゃった。全部ちゃんとニャックポアンの時のままね」
マ「良かったねー」
リ「さてと。次はドコに来たんだろう?」
見渡すと、そこはとても奇妙な町だった。
水路の張り巡らされたユニークな町は、人も多く活気に満ちている。そして町の奥には城がそびえたっているのが見える。ここも城下町なのか。
リ「ここはどこですか?」と近くの人に尋ねる。
男「水の都スタンシアラだよ。
冒険者か?王様の悩みを聞いてあげな。それがお互いのためになるだろうさ」
スタンシアラというところか。そしてまた王様は悩みを抱えている。
水路を渡るために優雅なゴンドラはないが、小さなイカダがあちこちに停泊している。これを自由に使って良いらしい。新しい町、特に活気に満ちた町では武器屋や道具屋の品ぞろえなど気になるが、まずは王様に謁見してみることにした。
二人はイカダを幾つも乗り継ぎ、時に迷子になり、町人の助けを借りながら城まで渡り終える。それだけでも観光旅行をしているような、楽しいひと時であった。
城はそこそこ広そうだが、台所や地下牢を探索している場合でもない。王の間に行くだけなら大抵、兵士の警備する真ん中の階段を上っていくだけで事足りる。
兵「王様に会いにきたのか?それともお妃様に会いに来たのか?」
リ「王様、ですけど。お妃様に会いにくる人もいるの?」
兵「絶世の美女だからな。ファンは多いし、高級なドレスを売りつけたり、よからぬ商売に誘おうとする商人なんぞも多い」
リ「知らなかったわ」
兵「王様に謁見ならそのまま階段を上るが良い。お妃は病気がちでな。王の間には出ていない」
王の間に辿り着くと、先客が何人かおり、謁見待ちをしていた。お妃ではなく王様に何か売りつけたい商人たちだろうか。よくわからない。戦士風情の者もいるようだが。
二人の番になった。
王「謁見ご苦労。すでに多少の話は聞いておろう。
この国は豊かだ。何でもあるし、人も明るく、そして強い。政治も安定している。しかし、深刻な悩みが1つだけある。
妃となる者が、代々短命でな。元気な者を選んで結んでいるはずなのだが、どうも玉座に着いたとたんに病気になる。私の妻も病に倒れている。
そこでだ。特効薬となる薬を探してきてほしい。妻の病気を治してくれたなら、褒美に糸目は付けんぞ。権力が欲しいならそれもよい」
マ「お姫様が病気なのね?」
リ「姫っていうか、お妃さんね」
マ「え、違いがわかんない(汗)」
リ「まぁいいわ。あの王様の奥さんのことよ。
薬を探せとか言ってたけど、次はその手がかりを聞きこみながら町歩きね」
二人は町エリアに戻った。イカダに乗りながらあちこちさまよう。
武器屋を覗くと、やはり良い武器が揃っている。国が強いというのもうなづける。
武「この国は強いぜ。王がしたたかだ。
兵士には高い報酬を与えるし、がんばれば昇格もさせる。
町には楽しい店や珍しいもんがいっぱいあるから、皆この町に住みたくなるし、愛国心も湧く。
敵国が攻めてきてもひるみやしねぇ。王様自体が強いしな。
それに、敵の将軍が強ければ買収も試みる。『今の2倍の給料を出すぞ。わしの配下にならんか』ってな。高給なうえにこの楽しい町だろ?将軍だって寝返るさ。
よくわからんが、そうしてこの国は発展を続けてる」
宿屋は広く、幾つもの客室を持っていた。冒険者だけでなく、観光の人間や、王様に何か用事でやってくる来訪者も多いようだ。
土産屋や商店は、何を売っているのかよくわからない店も数多い。色鮮やかなものが並び、町の活気を象徴している。歩いていると楽しい。バーも幾つもあるようだ。
くまなく散策していると、町はずれに小さな店があった。何だろう?
気になって覗いてみると、ヨボヨボの老婆が水晶玉の前に座っている。
リ「占い師…?」
占「どれ、占ってしんぜよう。
ほほ~いほいほい!
ふむ。おぬしら、もう一人仲間がおるな?」
リ「え?一緒に冒険するのはイヤだから、さっき別れちゃったばかりですけど」
占「違う。わしが視えているのはもっと昔に仲間になった者じゃ。
かー!ヨボヨボの老人だわい」
マ「マケさんのことかな?」
占「しかしこの男、只者ではないな。
龍の魂を持っておる。
竜は戦いたがる。
龍は身を隠す」
マ・リ「???」
リ「何言ってるのかよくわからないわ」
『僧侶だけで魔王を倒すには?』