第53章 ステテコパンツ
金曜の夜がやってきた。
冒険者たちはスタンシアラ城の王の間に集まる。王がイベントの号令を掛けるようであった。
王「妃の薬を探させている。が一向に特効薬が見つからない。
領土を越えて、危険な地域まで探索に行ける精鋭を募る必要がありそうだ。
強い者を探す!
強い者を探す! 各冒険者は、場合によっては互いを殺し合ってもよい。その際に相手の武器を奪ってもよい。
ここまで来た強者たちだ。良い武器を持っているだろう。勝ち続けるものはすさまじい戦力強化になるだろう!
そしてもちろん、精鋭に選ばれた者にはさらなる褒美をつかわす。
期間は3日間。以上」
王はそれだけ宣言すると、足早に退いた。
うぉぉぉぉぉ!!
ざわざわ…
ある者たちは高揚し、ある者たちは動揺した。プレイヤーキルがスリリングであることを、誰もがわかっている。
兵士からイベント内容の補足が入った。
「国のあちこちに宝箱が落ちています。そこにも武器や防具が、そして《エルフの飲み薬》などのレアアイテムが入っています。トレジャーハントによってアイテムを集めるのも良いでしょう」
リ「それでトレジャーハントか。
アタシたちにはこっちのほうが向いているわね」
マ「うん。戦わないで宝探ししよう?」
リ「そうなんだけど、そう簡単にもいかないでしょうね。
こちらが戦うつもりじゃなくても、アタシたちの武器を狙って攻撃してくるプレイヤーがいるわ、きっと」
マ「えぇー!!」
リ「身をひそめたり逃げたりすることも、考えていなくちゃね!」
二人はその夜、早々に宿屋に部屋をとった。
しかし、考えてみれば宿屋が安全とも言えないのだった。モンスターは町に入ってこないが、プレイヤーたちは町の中にもいる。女二人のパーティだとわかれば、襲ってくる奴がいるかもしれない!
マ「どうする?これじゃおちおち眠れもしないよぉ」
リ「何かいいアイデアないかしらね!
これまで手に入れたアイテムで、使えそうなものないかしら?」
二人は所持アイテムを漁ってみた。
マ「これだぁ!」
マナが取り出したのは、《ステテコパンツ》であった!
リ「バカじゃないの!それしゅび力めちゃくちゃ低いのよ!」
マ「装備するんじゃなくてさぁ?
バルコニーに干しとけばいいんじゃない?
ほら、『男が泊ってる部屋ですよー』って思うんじゃないみんな?」
リ「なるほど!やらないよりはやっておいたほうがいいかも!」
この一人暮らし女子のような防犯対策は、少々の効果を発揮するのであった。
翌朝、起きてからも二人は色々考えた。
か弱い女に見えると狙われる。マナはすでにいかつい《やいばのよろい》を装備しているが、リオの《水の羽衣》はいかにも女として目立つ。リオは守備力を妥協して、《くさりかたびら》を装備することにした。
強そうな武器を持っていることは、威嚇にもなれば狙われやすくもなる。リオはS級武器の1つである《王家のレイピア》を持つのもやめた。その前の《氷のやいば》もレア武器だし、キラキラと輝いていて目立つ。仕方ないので、以前どこかで手に入れた《鉄のやり》でも装備することにした。
すると今度は新たな問題が発生してしまう!リオの装備があまりにも貧弱で、スタンシアラ周辺の《ライノソルジャー》や《テラノバット》など倒せそうもない!
二人は、階層を戻ることにした。2つ3つ階層を戻れば、このイベントに参加しているプレイヤーはほとんどいなくなるだろう。
リオの策略は相変わらず冴えた。おかげで、あまり緊張感にさいなまれずに過ごすことが出来るようになった。
『僧侶だけで魔王を倒すには?』