第12章 ロマリア
皆から遅れること5日ほど。二人はようやく、第2層を目指していざないの洞窟を抜けることにした。
アリアハン島のフィールドエリアよりも少々強いモンスターがうごめいていた。《バブルスライム》や《どくいもむし》の小さいやつが大量に出現し、低レベルで強引に突破しようとするパーティや《どくけしそう》を用意してこないパーティはまんまと返り討ちに遭った。
特にマナはMP消費に依存する戦闘スタイルであるため、長丁場のダンジョンはハラハラものだった。ときにはMPを節約するためにただ防御し、リオが一人で短剣でモンスターを蹴散らしていった。
マナは打たれ強く、そしてリオは力強かった。
MPも《やくそう》も使い切りそうな頃、ようやくダンジョンの出口を抜けた!
二人の視界が激しく歪んだかと思うと、またもやお城の広間に転移していた。しかしアリアハンのお城とは違うようだ。
王「よく来た勇敢な冒険者よ。ここはロマリア城だ。
えぇい早く下がれ!ワシは何者かに《金のかんむり》を盗まれ苛立っておる」
リ「とりあえず王様の《金のかんむり》を探せ、みたいな流れね。
どこにあるのかしら。お城で色んな人に話を聞いてみないと」
二人は城下を歩いた。アリアハンの城よりもやや重厚な造りをしているようだった。兵士の数は多く、生真面目な顔をしている。武器屋や宿屋、色々な設備が効率よく並んでいた。
リ「新しい世界を探検したいとこだけど、とりあえず武器の調達が先ね。
いざないの洞窟で痛感したわ。アンタ、呪文以外の攻撃手段も持っておかないと、長丁場の戦いでロクデナシになっちゃうからね!」
マ「えぇぇ~!斧で殴りかかるとか、わたしヤだなぁ(汗)」
リ「大丈夫。そこも考えてるわ。
ムチがあると思うのよ。それならちょっと遠くから攻撃できるし、《バギ》みたいに全体攻撃も出来るし」
マ「わぁ、ムチかぁ♪」
二人は武器屋を覗いてみた。兵士用という感じのごつい武器が店内に並んでいる。しかし、次の瞬間に驚愕する!
リ「え!こんなに高いの!?」
マ「高ぁー!」
ロマリアでは、武器が非常に高いのであった!《はがねのつるぎ》、《てつのおの》など本格的な戦闘武器が充実しているが、どれも1万ゴールドを越える高額品だ。アリアハンの武器が50ゴールドや70ゴールドだったことを思い出すと、すさまじい差である。
「ここからはそれぞれに工夫して武器を手に入れよ」運営が訴えかけているようだった。
お目当てのムチは1つだけある。《刺のムチ》だが、なんとそれは武器の中でも最も高く、2万ゴールドもする!二人の所持金は23,000ゴールドほどだった。
マ「買えなくも…ないけれど…(泣)」ようやく新しい武器が手に入るかと思ったのに、高い壁に遮られたようであっさりと落ち込んでしまった。
防具も新調しなければならないはずだ。しかし《刺のムチ》を買ってしまうと防具なんぞ買えそうにもない…。
マ「いいよ!いいよ!わたし、《バギ》でも攻撃できるわけだし!」マナはリオを思いやる。
リ「うーん………」リオは真剣に考えている。
リ「よし!買おう!マナのために《刺のムチ》!」
マ「えぇ、いいよ!他のモノ買おうよ!死ぬの嫌だから防具のほうが大事じゃん?」
リ「そう。フツウならそう考えるところよ。
でもアタシたち、フツウじゃないでしょ?アンタがガチガチだしかばってくれるから、アタシたち防御能力は高いのよ。
それなら武器にお金割いてもイイってモンじゃない♪」
リオは聡明で、そして優しかった。
《刺のムチ》を買って、そしてマナが装備した。そしてリオはさらに、2000ゴールドする《てつのたて》をマナに買い与えた。マナの守備能力をさらに高めて、万全を期すための策だった。また、盾で防御すれば攻撃を受けるときの心理的ダメージも減るだろうと、リオは考えていた。
未知なる新大陸攻略に向けて、少し装備が強化された。…相変わらず、まったく魔法少女っぽくはないが(笑)
『僧侶だけで魔王を倒すには?』